東洋医学

四診について

今回は東洋医学的にお体を診る上で欠かせない四診についてのお話になります。
ホームページ内でも随所に「脈やお腹を診て・・・」と、わかりやすく簡潔にお伝えする為に書いてはいますが、これだけではやはり説明不足ですよね。
興味のある方向けに、もう少し具体的にお話していきたいと思います。

四診の分類

まず診察するに当たって行っている事は、

  • 望診
  • 聞診
  • 問診
  • 切診

と、四つに分類する事が出来ます。
問診に関しては病院や接骨院などに行っても、先生から症状についてお話を聞かれますよね。
しかし、望診・聞診・切診は初めて聞く方もいらっしゃるのではないでしょうか。

東洋医学的にお体を診るということは、問診でお話だけ聞いて「この症状ならこのツボを使いますよ~」というような、単純なものではありません。
問診でお聞きした事を踏まえて、実際にお体にはどのように反応として現れているのかを詳しく把握しなくてはなりません。
その為に、望診・聞診・切診を行います。

では、それぞれどんな内容なのかをお話していきます。

望診

望診とは、視て診察する事を指します。
難経六十一難には「望んで之を知る。之を神と謂う。」とあります。
患者さんを見ただけで、患者さんの悩みや気血の変動が分かってしまう・・・まさに神様のようですね。

しかし、残念ながら私にはそこまでの技術は有りません。
だからと言って、望診しないわけではございません。
望診だけで全てを判断する事は出来ませんが、ひとつの判断材料にはなります。

色に関しては五行に分類出来ます。

木:青(緑)』  『火:赤』  『土:黄』  『金:白』  『水:黒

この色が、どのようにお体に出ているかで大まかな体の状態を考えます。
お顔にお化粧されている場合はちょっとわかりにくい事もあるのですが、腕の内側(尺内)を見るとわかりやすく現れています。
日焼けしにくいところになりますので、色味がわかりやすいです。

例えば、私自身の腕の内側を観察してみます。

一見白い肌に見えます。
しかし、よくよく観察すると所々赤みを帯びている所があったり、少し青く見える部分が出ていたりします。

は五行で考えると、つまり「金:肺」になるから、肺に変動が起こりやすいのかな~?
けど、とかっぽく見える部分もあるし、とか肝の変動も出るのかも知れないなぁ~。」
と、大まかに考えます。

最終的には四診を総合的に考える上での一つの判断材料なので、あくまで傾向を捉えるという感覚で考えます。
(照明の加減で見え方も変わってきてしまいますしね。)

細かく言うと、色味も関わってきます。
生色死色と言って、艶のある生き生きとした色なのか、光沢のないくすんだような色なのかも関係してきます。

聞診

聞診(ぶんしん)とは、患者さんの「」やその「」を聞いてお体の状態を判断したり、「臭い」で判断する事です。「聞」という字が使われていますが、「臭い」もここで判断していきます。
難経六十一難には「聞いて之を知る。之を聖と謂う。」とあります。
望診の時は「神」と形容されていましたが、こちらでは「聖」となっていますね。
どちらにしても、私には到底及ばない領域です。
しかし、こちらも出来ないからと言ってやらないわけではございません。
わかる範囲でどこの経絡に変動があるのか、判断の材料のひとつにしています

声は「五声」という形で五行に分類出来ます。

木:呼」 「火:言」 「土:歌」 「金:哭」 「水:呷

いくつか少し具体的に説明してみましょう。

例えば「」ですが、普通に話している時にも、まるで誰かを呼んでいるような喋り方をするように、大きく通る声で話すのが特徴です。

」で言えば、どこか抑揚をつけてリズムに乗ったような喋り方をするのが特徴です。
極端に言えば、鼻歌を歌っているかのように話す感じでしょうか。

音に関して言えば「五音」という形で五行に分類出来ます。

木:角(ミ)」 「火:微(ソ)」 「土:宮(ド)」 「金:商(レ)」 「水:羽(ラ)

括弧に音階を書きましたが、大よそ声の高さや、発音の仕方によって分類していきます。
「どちらかと言ったら低い声だなぁ」とか、「清い声をしているなぁ」とか、大体の声から感じる印象で考えます。

ここでポイントになるのは、普段と声の感じが変わっているかどうかという事です。
普段から「呼」のように喋っていた人が、ある時急にボソボソ・・・っと喋るようになってしまったら、それは誰が見ても調子が悪いのかな?と心配になりますよね。
そこまで大きな変化でなくても、「声に元気がない・張りがない」というのは何となくわかります。
それが治療する事によって、声の張りや力強さが出てくると、良い方向に向かったんだなという事がわかります

最後に、臭いに関してですが、こちらは私はほとんどわかりません。
正確に言うと、臭いに関しては普段から気をつけている方がほとんどで、香水やデオドラントなどでわからなくなっているんですよね。
それでも、例えば糖尿病をお持ちの方に現れる特有の甘ったるいような臭いなど、特徴的な臭いはわかります。
そういう臭いを感じた時にだけ意識するような形で考えています。

聞診は、熟練の先生方でも意見が別れる事が多く、まだまだ研究の余地があるものと聞きます。それだけ難しいものですが、まずはわかる範囲で日頃の治療に活かしております。

問診

問診は鍼灸院に限らず、病院や接骨院等の他の医療機関でもされる事なので馴染みは深いと思います。
お悩みの症状について、最初に詳しくお話を聞くものです。
難経六十一難には「問うて之を知る、之を工(たくみ)と謂う」とあります。
「神」「聖」と続いて今度は「工(たくみ)」となりました。お体の状態への問い方や捉え方を「工夫」する事によって、工に近づけるのかも知れませんね!

病院などで、問診の際に聞かれる内容としては

  • 主訴(来院した理由、一番のお悩み)
  • 現病歴(一番のお悩みの経過、いつから、どんな風に、等)
  • 既往歴(これまでにかかった大きな病気、怪我)

等ではないでしょうか。
この辺りを中心として、普段飲んでるお薬家族歴(家族で同じお悩みをお持ちの方はいますか?など)を聞かれる事もあるかも知れません。
基本的には同じようにお悩みの症状について掘り下げていく形にはなるのですが、東洋医学的にお体を診ていく上では不足している情報があります。
「食欲」「便通」「睡眠」の状態についての情報です。

食欲・お通じ・睡眠のお悩み

これらはお悩みの症状と別に考えている場合が多いのですが、よくよくお話を聞いてみると、「症状が出始めた頃から食欲が落ちている。」もしくは「食欲が急激に増している。」という事が多々あります。
便通や睡眠に関しても同じように変化が出ています。
その他、暑がりなのか、寒がりなのかをお聞きしたり、女性であれば、月経周期は正常に来ているか、月経痛やPMSの症状はあるかなどもお聞きしていきます。
このようにお体の事を尋ねていくと、どの経絡に変動があるのかがわかってきます。

経絡って何?

そこに検討をつけて、最後に行う切診に繋げていくのです。

切診

他の三つは何となく想像出来るかも知れませんが、切診と言われても全然ピンと来ませんよね。
難経六十一難には「脈を切して之を知る、之を巧と謂う」とあります。
「切」とありますが、実際に切るわけではありません。
切診とは、所謂「触診」の事を指します。
実際に患者さんのお体に触れて、状態を診ていくという事です。

切診は、更に「切経」「腹診」「脈診」と、三つに分かれます。
これまで「望診」「聞診」「問診」で診て来たお体の状態が、実際にどのようにお体に現れているのかの確認していくのです

切経

肘から下、膝から下に流れている経絡を実際に触り、それぞれの経絡の状態がどうなっているのかを確認します。
左右で比較するのが大事で、例えば「左はサラっとしているのに対し、右はすこしザラついている」など、経絡に変動があると、左右で差が出ているものです。
また、経穴(ツボ)も同じように左右での比較が大事です。

腹診

お腹は五行で分類出来ます。
お腹のどの部分がざらついている盛り上がっているなどで、どの臓腑や経絡に変動が出ているのかを診ることが出来るのです。

例えば、「おへその周りの皮膚に少し突っ張り感があり、押すと痛みがある。」「右の肋骨の際に沿って触ると、左と比べてザラつきを感じる。」など、皮膚表面にも変化は出ていますし、更に押す事で奥に痛みを感じる事もあります。
痛みがあるから「内蔵のどこが悪い」という風に考えるのは東洋医学的ではありません。
あくまで痛みのある部位の経絡に「変動がある」という形で捉えます。

脈診

左右の手首にある橈骨動脈に指を三本ずつ当て、計六箇所の脈を診てお体の状態を診ます。
更に、当てた指を沈めたり、浮かせたりして脈の全体や、陰陽の差を診る事によってどの経絡に変動が出ているのかを診ます。

「この方の脈は全体的に沈めないと触れないな、脈が随分早いな、そしてべチャッと潰れてしまうような脈をしているな。」

と、脈を診ながら考え、この方にはどのように鍼をするのが一番体に合っているのかを考えます。また、左右のどの指に強く触れるのか、弱く触れるのか等で経絡の虚実の判断もします。

四診を総合的に考える

四診をしていく過程で、「〇〇のような症状は出ていないですか?」とお尋ねした時に「なんでわかるんですか!?」と、驚かれる事がありますが、決して特殊な能力があるわけではありません。
「なんでそんな検討ハズレな事聞くの?」という顔をされる事もございますので。笑

東洋医学には揺ぎ無い理論があります。
「お体にこういう反応が出ているなら、こういう症状も出ているかも。」「反応が出ているけど、症状としては出ていないから、大きく変動しているわけではないのかも。」
など、今現在のお体の状態を正確に把握する必要があります。
また、症状が長く続いていて今の状態が当たり前になってしまう事で、気にならなくなってしまう事もあります。「気になっていない」という事は「悩んでいない」に近いのですが、四診を総合的に考えるという事に関して言えば、ちゃんと把握しておけると治療に役立ちます。

普段から自分の体の事を意識して生活している人でさえ、一年前のお体の状態を常に覚えている人は稀です。これまでの自分の体を振り返るきっかけと思って、思い返してみてください。そして、四診で知りえた情報を総合的に考えて治療に臨みます。

この「総合的に」というのがポイントです。

最後の決め手にするのは「切経」の中に含まれる「脈診」になるのですが、ここにだけ注目してしまうと見誤ってしまう事もあります。

一鍼で変化する四診

熟練の先生になればなるほど、一鍼の影響力は大きいものになります。
手先足先がぽかぽかと温まって来たり、さっきまで押されて痛かった所が和らいでいたり、呼吸が深く吸えるようになっていたりと、様々な反応が出ます。
このような反応を診ながら治療を進めていく事になりますので、一鍼しては脈やお腹を確認する、丁寧な治療が必要になってくるわけです。

鍼って本当に痛くないの?

東洋医学的にお体を診る上で、四診を正確に出来る事は、鍼を上手く刺せる以上に大事な事だと思っています。
逆に言えば、四診を診ないで東洋医学的に治療する事は出来ないはずです。
当院に限らず、東洋医学の鍼灸をお求めの際は、しっかりと診察してくれる「鍼灸専門院」を是非お探し下さい。

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