今回は「随証療法(ずいしょうりょうほう)」についてお話していきたいと思います。
随証療法とは
まずは経絡治療家が読む教本に書いてある内容を、かみ砕いて説明してみます。
「お悩みを抱えたお体を気血の変動として統一的に観察し、どの経絡に変動が起こっているのかを把握し、反応の出ている経穴(ツボ)に対して、鍼灸を使って補瀉調整します。」
どうしても少し難しい言い回しになってしまいます。
もう少し簡単に説明すると
四診を通して得た「証(あかし・しょう)に随う(したがう)治療」が随証療法です。
難しい単語はありますが、とにかく大事な事は
「病名」や「お悩み」に対して治療するのではないという事です。
何となく、「証」が大事なものというのは伝わったでしょうか?
では、「証に随う」為にまずは証を決めなくてはなりません。
証を立てる
お体の状態を把握する、四診は欠かせないものです。
詳しくは四診についてをご覧ください。
四診を簡単に説明すると、
今の症状がどういった過程で出たのか、どんな時に辛くなるのか、症状についてのお話に加え、食欲・睡眠・便通についても詳しくお聞きします。
そしてそれに伴って体にどんな反応が出ているのかを、手足、お腹、脈など、お体全体をよく観察します。
皮膚の張り感が左右で違っていたり、お腹の下の方だけ冷えていたり、押されると左右で痛みの違いがあったりと、自分では気づいてない反応が出ているものです。
お話の内容、実際に体に触れての確認を総合的に考えます。
そうすると、例えば
「この人は肝の力が弱くなっている事によって、体の釣り合いが取れなくなっている」
というように、今お体がどのような状態になっているのかがわかります。
そして、この状態を良くするには、どこのツボに、どのような目的の鍼をすれば良いのかを考えます。これを「証(あかし・しょう)を立てる」と言います。
証が立てば、あとは決まったツボに鍼をすれば良いというものではありません。その人のお体の状態に合った鍼をする必要があるからです。
敏感そうな人であれば、鍼はより細い物、もしくは「てい鍼」を使う必要がありますし、鍼の角度も気を付けなくてはなりません。良い方向に向かっているかどうかを、切診をして確認しながら治療を進めていきます。
同病異治、異病同治
証を立てるという事は、「このお悩みには、この証が立つ」という単純なものではありません。お悩みの種類によって「この証が立ちやすい」という傾向はありますが、それも人によってバラバラです。
これを同病異治と言います。
「同じ病でも治し方は異なる」という意味です。
それとは逆に、全然違うお悩みでも、証は同じになる場合もあります。
これを異病同治と言います。
例え同じように体の釣り合いを崩しても、出てくる症状は人によって違うという事です。
なぜ随証療法が必要なのか
証に随った治療を続けていると、「その人に合った体」になっていきます。これは「それぞれの価値観の健康」に近づくものだと思っております。
お悩みの症状や、病名にどうしても意識は行きがちです。しかし、自分の体全体に意識を向けると、違った答えが出てくるかも知れません。鍼とお灸を使って、お手伝いさせて頂きます。